医療事件

医療訴訟・医療紛争の現状と課題 その4

kentaro

法律のひろば2023年3月号「医療訴訟・医療紛争の現場と課題」のうち、「説明義務、インフォームド・コンセントの課題」(木下正一郎弁護士)について

説明義務違反についてもいくつか最高裁判例がありますが、それらについて

  1. 最判平成12年2月29日については「特にインフォームド・コンセントの場面では患者の自己決定権を重視する姿勢を示したもの」
  2. 最判平成13年11月27日および最判平成28年10月27日については「優れて患者の主観的・具体的状況に対応した説明や、その説明を受けて熟慮する機会の必要性を重視しており」
  3. 最判平成17年9月8日については「「判断する機会」を与えたか否かを重視している」

と整理し、「詳細な情報提供の必要性を指摘した上、実質上、患者が自己決定権を行使し得る状況にあったか否かを検討することを求める内容になっていると評価できる。」とまとめられています。

他の文献で「インフォームド・コンセントのプロセスで重要なのは、『治療の説明をすること』よりも、『説明をしたあと、患者が納得いくまで話し合っ決めること』である。(中略)治療法の選択肢を並べて『あなたが決めなさい』と患者にゲタをあずけてしまったのでは、医療者としての責任の放棄以外の何物でもない。」と論じられている点が引用されています。
この指摘は弁護士業にも共通する部分があり、責任の放棄にならないよう意識したいです。

欧米諸国の医学会で注目されているShared Decision Making(SDM)についも触れられています。
SDMとは「医師と患者の両者が、医療に関するリスクとベネフィット、患者個人に関するすべての情報を共有し、個人の選好を示しながら共同して医療上の決定を行うもの」。
共同して医療上の決定を行う点が重要だと思われます。

相談でも説明義務について聞かれることは多くあります。
説明が足りていない点があることは相談者が話すとおりであっても、それが法律上の過失とはいえないことも多く、発生した結果との関係(因果関係)など、難しい法律判断が求められます。

ABOUT ME
平井 健太郎
平井 健太郎
弁護士
大阪市で医療過誤事件(患者側)を中心に扱っています(全国対応)。 現在、訴訟9件を担当しています。
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