医療事件

医療訴訟・医療紛争の現状と課題 その3

kentaro

法律のひろば2023年3月号「医療訴訟・医療紛争の現場と課題」のうち、「医療訴訟における診療ガイドラインの利用」(松井菜採弁護士)について

産科事件や他の事件でも、基本的な文献と並んで、ガイドラインの有無・内容は必ず確認すべきものだと思います。
調査や交渉に限らず、裁判でも提出するなどガイドラインの重要性は増しているとも思われますが、その位置づけなど注意すべき点などが本論稿で整理されています。

「診療ガイドラインの内容との乖離の度合いにもよるが、「過失があるかもしれない」ととりあえず考え、相談者に対し、診療経過と法的責任の調査を勧めることは多い。」
⇒私も相談で経緯を聴いた後、ガイドラインなどを参照して過失の有無(仮)を検討して、進めるかどうかを検討して、相談者には説明するようにしています。

「診療ガイドラインは調査の出発点(入口)にはなるが、損害賠償責任を追及するか否か、提訴するか否かの方針決定をする段階(出口)においては、診療ガイドライン本位で判断するものではない。」
⇒ガイドラインは必要・必須な資料ではあるが、これだけでは十分でないということです。この段階で必要な調査を尽くしていないと、裁判などで病院側からガイドラインに反する文献が提出されるなどして対応に追われることになります。

「ガイドラインと医療水準はイコールではなく、仮にガイドラインが存在したとしても、医療者には専門家として、診療に対する裁量があることが認められている。」
という他の論文の指摘を引用した上で、最近の裁判例を調査された結果として
「診療ガイドラインの記載のみに依拠して過失を認定したものはなかった。」
という分析結果を残されている。
ガイドラインがあるからといって、そこで思考を止めてはいけないという注意喚起だと思います。

医療事件における診療ガイドラインについて、重要な点を整理されており、今後も見返す機会が増えると思います。

ABOUT ME
平井 健太郎
平井 健太郎
弁護士
大阪市で医療過誤事件(患者側)を中心に扱っています(全国対応)。 現在、訴訟9件を担当しています。
記事URLをコピーしました