医療事件

医療訴訟・医療紛争の現状と課題 その2

kentaro

法律のひろば2023年3月号「医療訴訟・医療紛争の現場と課題」のうち、「近年の医療訴訟審理の課題」(大森夏織弁護士)について

論稿の冒頭に医療訴訟の役割として重要な指摘がされています。

「双方当事者の負担感を思えば、医療紛争において訴訟という紛争解決の最終手段に至らずに、原因究明と患者側の納得、医療現場への教訓と再発防止策共有、明日のより良い医療の構築などがなされれば、それに越したことはない。」

私が依頼を受けている方々も、最初から訴訟したいという人はおらず、手段として訴訟しか残されていために訴訟を選択していると思われます。
費用面でも時間の面でも負担が大きく、もちろん精神的な負担も大きいので、訴訟に至らない方がよいと考えています。

本論稿で気付きのあった箇所を引用します。

  1. 集中部審理の特徴として、証拠調べ前和解率の増加と尋問率の減少があり、東京では尋問前和解率が70%台と高い
  2. 手術ビデオの不提出(手術室ハードディスクの残存期間が経過しても主治医が保有している場合がある。)
  3. 医療側からの不可知論や裁量論を安易に採用せず、どの場面においても、医療側から合理的説得的な立証がなされない場合には原告の立証に一定の証明力が認められるべきである。

尋問前和解が多いということは、文献や意見書による証明の重要さを物語っているように思います。


手術ビデオの関係は指摘のとおりで、カルテの保存期間が経過していないからといって油断はできません。
カルテとは保存システムが違っている病院が多く、開示拒否に遭遇することも多いため、手術事件では証拠保全も検討する必要があると考えています。

医療側からの主張がはっきりしないことはありますが、患者側としては病院の過失と因果関係を積極的に証明していくことに変わりありません。

ABOUT ME
平井 健太郎
平井 健太郎
弁護士
大阪市で医療過誤事件(患者側)を中心に扱っています(全国対応)。 現在、訴訟9件を担当しています。
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