医療事件

家族による自宅で生活していた患者の人工呼吸器取外しについて殺人罪の成否が争われた事例

kentaro

横浜地裁平成17年2月14日(医事法判例百選第3版、196頁)

患者は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)に罹患し人工呼吸器を装着して自宅で寝たきりの闘病生活を送っていた。
家族が人工呼吸器のスイッチを切り替え酸素供給を停止させ、窒息死となった。
刑事裁判で殺人罪の成否が争われ、嘱託殺人罪の成立が認められ、執行猶予付き判決が言い渡されてた。

判決では「日頃の懇願を受け入れて人工呼吸器を停止させたものというべきであるから、被告人には、殺人罪の成立ではなく、嘱託殺人罪の成立を認めるのが相当である。」と述べられている。

本件のような場合、①死の意味を理解する能力の有無、②嘱託・承諾が真意に基づくものといえるか、という2段階で検討する必要がある。

参考(現時点の刑法)
第199条 人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の拘禁刑に処する。
第202条 人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は、6月以上7年以下の拘禁刑に処する。

ABOUT ME
平井 健太郎
平井 健太郎
弁護士
大阪市で医療過誤事件(患者側)を中心に扱っています(全国対応)。 現在、訴訟9件を担当しています。
記事URLをコピーしました