離婚

性的虐待・精神的虐待の事実が認められなかった事例

kentaro

前橋家庭裁判所の令和4年3月30日に判決が言い渡された離婚等請求事件を整理します(出典ウエストロー・ジャパン)。

【事案の概要】

妻が夫に対し性的虐待及び精神的虐待の婚姻を継続し難い重大な事由を理由として離婚を求めるとともに、未成年者らの親権者の指定、養育費の分担、離婚慰謝料等の支払を求める事案。

【争点】

  1. 婚姻を継続し難い重大な事由の有無
  2. 親権者指定
  3. 原告の慰謝料請求の有無及び額

【判決の内容】

「原告と被告の争いの直接の原因は、原告と同僚男性とのラインメッセージのやりとりによるものであって、その内容は、性的嗜好を示唆する会話を楽しむものであって、これらのメッセージのやりとり自体、仮に不貞の事実がなくとも、夫婦の一方が第三者たる異性とやりとりすることが社会通念上許容されるものではなく(中略)、被告がこれにより原告の不貞の事実を疑ったこと及び約2日間にわたり原告を厳しく問い詰め、公正証書を作り離婚しようなどというやりとりまでなされたこと自体は、原告自身の行為に由来するものとして、やむを得ない側面がある。」などと認定している。

そのうえで、「原告と被告が前記ラインメッセージのやりとりに端を発し、夫婦の在り方を見直すべく別居することはやむを得ないとしても、現時点で婚姻共同関係の回復が不可能又は著しく困難であるとしてその破綻を認めることまではできない。」と判断した。

原告が主張する性的虐待や精神的虐待の事実は、夫婦間でのラインメッセージのやりとりから、原告が被告を畏怖している様子は窺われないなどと述べ、各虐待の事実は認められていない。

コメント

夫婦間の争いの直接の原因が原告側にあること、別居期間が1年3ヶ月であることなどから、婚姻を継続し難い重大な事由はないと判断されている。

性的虐待や精神的虐待の事実が認められれば結論が変わった可能性はあると考えられるが、これらの事実については、夫婦間で行われたラインのやりとりが被告の主張に沿うものであったと評価されていると思われる。

ラインという客観的な証拠(どのような内容が送信されているか)から事実を認定し、それぞれの主張との整合性を検討していると思われ、裁判で客観的な証拠が重視されることが現れていると考えます。

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平井 健太郎
平井 健太郎
弁護士
大阪市で医療過誤事件(患者側)を中心に扱っています(全国対応)。 現在、訴訟9件を担当しています。
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