離婚

婚姻関係破たんを根拠づける事実を排斥する主張が参考になる事案

kentaro

東京家庭裁判所立川支部の令和4年4月21日に判決が言い渡された離婚請求事件を整理します(出典ウエストロー・ジャパン)。

【事案の概要】

夫が妻に対し、婚姻関係は破綻し婚姻を継続し難い重大な事由があるとして離婚を請求するとともに、長男の親権者を妻と定めることを求めた事案。

【争点】

  1. 婚姻関係破綻の有無
  2. 有責配偶者の抗弁の成否
  3. 親権者の指定

【判決の内容】

争点① 婚姻関係破綻の有無

「少なくとも原告が自宅を出て被告と別居を開始した平成27年12月21日の時点では、原告と被告の婚姻関係は破たんしていたとは認められない。」として別居時点での破綻を否定している。

夫側からは、それ以前の時期の破綻も主張されていたが、「その後(中略)原告と被告が同居し、第二子をもうけることを考えていたことなどに照らすと、上記時点において、原告と婚姻関係が破たんしていたとは認められない。」とした。

平成27年3月の時点については、「平成25年の手紙は、同年3月に被告の父が死亡したことにより精神的に落ち込んでいたところ(中略)長男のことについて被告任せになっていることなどに不満を募らせて作成したものと認められることに照らすと、強い口調で原告を非難するものであったとしても、これをもって原告と被告の婚姻関係が破たんしているものとは認められない。」と判断し、「平成27年5月のやりとりについても(中略)その後も、離婚について具体的な話もでておらず、週末には家族で食事をしたり、出掛けたりしていること、(中略)長男のためにも離婚したくなかったことから、原告に知られずに原告とBとの不貞を収束する方法を考え、Bとの間で本件示談書を作成したことなどが認められ」るとして婚姻関係の破たんを認めなかった。

しかし、別居後に関しては、夫から一貫して離婚を求めていたこと、妻から夫に連絡を取ろうとしていなかったことを認め、別居から既に6年以上が経過していることに照らし、婚姻関係は既に破綻し回復の見込みがないと認めた。

争点② 有責配偶者の抗弁の成否

まず、「原告は、別居の契機となった不貞を行ったものであるから、有責配偶者に当たる」と認定した。

その上で、長男がASD及びADHDを合併していること踏まえ、「両親の離婚は、予期しない変化に該当するから、到底受け入れられないとの意見が提出されている」ことや、妻側の就労状況や長男の対応の大変さを認定し、結婚から別居まで約8年あり、「別居から口頭弁論終結時まで6年以上が経過し、別居期間がそれなりに長くなっていることを考慮しても、原告からの離婚請求は信義則上認められない」と判断した。

コメント

まず、婚姻関係の破綻時期について、夫側から複数時点の主張が行われている。これに対して妻側は、夫が指摘する妻の言動について、言動に至った理由や当時の精神状態などを理由に反論を行っている。

もっとも、別居から相当期間が経過していたこともあり、婚姻関係の破たんは認められている。

そして、有責配偶者(不貞をした側)からの請求は認められるのかという点について、子どもに与える影響を重視し、妻側の就労環境なども考慮し、最後に婚姻から別居までの期間と別居期間をの長短を考慮し、最終的に離婚請求することは認められないと判断している。

本件は、婚姻関係の破たんについて、相手の主張を排斥するための論法が参考になり、有責配偶者の判断において子への影響をどのように考えるべきか参考になる事案である。

ABOUT ME
平井 健太郎
平井 健太郎
弁護士
大阪市で医療過誤事件(患者側)を中心に扱っています(全国対応)。 現在、訴訟9件を担当しています。
記事URLをコピーしました