一部だけ財産分与の裁判をしないことは許されるのか
最高裁第二小法廷令和4年12月26日に言い渡された判決を整理します(出典裁判所ウェブサイト)
事案の概要
離婚を請求するとともに附帯して財産分与の申立てをした事案であり、原審では「上記医療法人が上告人に対して財産の横領等を理由に1億5767万円余の損害賠償を求める訴訟が係属中であること等に照らせば、本件出資持分については、現時点で、上告人の上記医療法人に対する貢献度を直ちに推し量り、財産分与の割合を定め、その額を定めることを相当としない特段の事情があるから、財産分与についての裁判をすることは相当ではない。」と言い渡されている事案。
争点
分与を求める財産の一部につき財産分与についての裁判をしないことが許されるか。
判決の内容
民法768条3項、人事訴訟法32条1項の規定は「離婚請求に附帯して財産分与の申立てがされた場合には、当事者が婚姻中にその双方の協力によって得たものとして分与を求める財産の全部につき財産分与についての裁判がされることを予定しているものというべきであり、民法、人事訴訟法その他の法令中には、上記財産の一部につき財産分与についての裁判をしないことを許容する規定は存在しない。」とし、
「また、離婚に伴う財産分与の制度は(中略)できる限り速やかな解決が求められるものである(民法768条2項ただし書参照)。」「両者を同一の訴訟手続内で審理判断し、同時に解決することができるようにしている。」といった理由を述べた上で
「離婚請求に附帯して財産分与の申立てがされた場合において、裁判所が離婚請求を認容する判決をするに当たり、当事者が婚姻中にその双方の協力によって得たものとして分与を求める財産の一部につき、財産分与についての裁判をしないことは許されないものと解するのが相当である。」と判示しています。
コメント
条文などの制度趣旨から、結論として、分与を求める財産の一部につき財産分与についての裁判をしないことが許されないと判断しています。原審では財産分与の割合や額を決められない特別な事情があるとしていましたが、それらの事由があったとしても一部だけ判断をしないことを認めないとしました。