医療事件

エホバの証人輸血拒否事件

kentaro

最高裁平成12年2月29日(医事法判例百選第3版、70頁)

宗教上の信念から、いかなる場合にも輸血を拒否するという固い意思を有していた患者に対し、輸血以外に救命手段がない事態に至ったときは患者・家族の諾否にかかわらず輸血する方針を採用していた病院が、手術において輸血を行った事案

判旨

  • 患者が、輸血を受けることは自己の宗教上の信念に反するとして、輸血を伴う医療行為を拒否するとの明確な意思を有している場合、このような意思決定をする権利は、人格権の一内容として尊重されなければならない。
  • 本件手術を受けるか否かを自身の意思決定に委ねるべきであった。
  • 輸血を伴う可能性のあった本件手術を受けるか否かについて意思決定をする権利を奪ったものといわざるを得ず、この点において同人の人格権を侵害したものとして、同人がこれによって被った精神的苦痛を慰謝すべき責任を負うものというべきである。

メモ

  • 単に自己決定権と書くのではなく、どのような内容の権利なのか具体的に摘示する(本件だと、本件手術を受けるか否かについて意思決定をする権利)
  • 本件は、輸血拒否という「明確な」意思があった事案であり、明確でない場合にどのような判断になるかは検討が必要
  • 自己決定権侵害自体を請求することもあるが、認められる慰謝料額は決して高いとはいえない
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平井 健太郎
平井 健太郎
弁護士
大阪市で医療過誤事件(患者側)を中心に扱っています(全国対応)。 現在、訴訟9件を担当しています。
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