二次性頭痛を疑い除外できていないとして検査義務違反が認められた事案
kentaro
弁護士平井健太郎のブログ
右橈骨遠位骨折の治療として掌側ロッキングプレート固定術による手術を受けて11年余り経過後、右示指の伸展障害を訴え受診したところ、手術時に挿入されたスクリューが長いことが確認された事案
(大阪地裁令和6年11月5日判決、医療判例解説118号103頁)
【争点】
【判旨+メモ】
事実として、手術が障害の原因であることを認めている。
本件手術に用いられたスクリューの長さが原告の右示指伸展障害等の原因になったものと認めるのが相当である。
しかし、医療水準との関係で、過失は認められなかった。
本件手術が行われた平成19年当時、本件術式について、スクリューが背側に突出することで伸筋腱の損傷が生じたという症例報告が相当数あったものとは認められず、また、スクリューが背側から突出しないよう術者に注意を喚起する文献も、当時のものとしては、証拠上見当たらない。
(中略)
これらの事情に鑑みれば、本件手術当時、上記のような本件術式の合併症に関する知見が、被告病院と類似の特性を備えた医療機関に相当程度普及していたものとは認められず、被告病院において当該知見を獲得することが期待される状況にあったとはいえない。
そうすると、本件手術が実施された平成19年7月当時、橈骨遠位端骨折に対する本件術式の実施に当たって、上記合併症の存在を踏まえて背側骨皮質から突出しない長さのスクリューを用いることが医療水準として確立していたとは認められない。
過失は手術を受けた当時の知見に基づき判断されるため、過失の判断は時期によって異なる場合がある。
本件は本人訴訟ということもあり、医療水準に関する主張が多くはなされていない可能性があり、他の事件では多くの要素をもとに判断される場合もあるだろう。