医療事件

外国での臓器移植後の診療と応招義務の関係

kentaro

東京高裁令和元年5月16日(医事法判例百選第3版、204頁)

慢性腎炎のため外国で腎移植手術を受けた患者は、日本でフォローアップ治療(血液検査や免疫抑制剤の投与等)を受けようとしたところ、問診過程で外国での移植事実が判明し、診療継続できないと対応を受けた事案

患者側は
①応招義務(医師法19条1項)違反
②不利な時期における診療契約の解除
を主張したが、いずれも認められず、損害賠償請求は認められなかった。

判決では、応招義務との関係について
①患者の生命・身体への危険の有無および程度(緊急の診療の必要性)
②他の医療機関による診療の現実的可能性(医療機関の代替性)
③病院において診療を拒否した目的・理由の正当性の有無および程度(診療拒否の正当性)
という判断基準を示して、具体的事実に基づいて当てはめが行われている。

本件では、「臓器売買(臓器ブローカー)の絡むような腎移植をした者」に該当するか否かを厳格に判断することが求められるものではなく、これに該当することの合理的な疑いが生じる場合には、患者の側において」「その疑いを払拭しない限りは、本件申合せの対象として取り扱って診療を拒むことも合理的な対応として許容される」と判断され、患者側で何を主張立証しなければならないかについて触れられている。

参考
医師法19条1項 診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。

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平井 健太郎
平井 健太郎
弁護士
大阪市で医療過誤事件(患者側)を中心に扱っています(全国対応)。 現在、訴訟8件を担当しています。
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