確立した複数の療法に関する説明義務
kentaro
弁護士平井健太郎のブログ
最高裁平成21年12月7日決定(医事法判例百選第3版194頁)
心肺蘇生したが意識は戻らず、死亡するまで昏睡状態であった患者に対して、主治医であった被告人が行った抜管からミオブロックの注射に至る一連の行為を対象として殺人罪で起訴された事件
地裁・高裁では執行猶予のある有罪判決が言い渡されており、上告したが上告棄却されています。
上告棄却の決定において
①回復可能性や余命について的確な判断を下せる状況になかったこと
②家族からの要請が病状等について適切な情報が伝えられた上でされたものではないこと
③抜管行為が患者の推定的意思に基づくということもできないこと
これらの事情を指摘し、法律上許容される治療中止には当たらない、と述べています。
最高裁の決定の中で治療行為の中止に関する要件は示されていませんが、決定の内容から「法律上許容される治療中止」があることは認められているといえます。
具体的にどういう場合に許容されるかは、地裁・高裁の判決内容や他の裁判例を参照する必要があります。