緊急帝王切開実施義務違反などが認められ、脳性麻痺の原因が分娩時の低酸素状態であると判断された事例
kentaro
弁護士平井健太郎のブログ
嘔吐や軟便を繰り返す乳児の入院後(当時1歳2か月)、肺水腫による呼吸原性心不全を直接の死因として死亡したことについて、遅くとも同月28日までに敗血症を疑い、敗血症に対する適切な治療行為を開始すべき義務があったして争った事案
(横浜地裁川崎支部令和元年9月5日判決)
【争点】
【判旨+メモ】
死亡原因について、敗血症発症の有無が問題とされたが、敗血症の発症は認められなかった。
以上のとおり,亡Bについては,そもそも腸管の細菌感染の徴候があったとは認められないし,原告らが敗血症発症の原因疾患として主張する麻痺性イレウス又は腸回転異常症が生じていたとも認められないから,これらの原因疾患に起因するバクテリアルトランスロケーションによって亡Bが敗血症を発症したとは認められず,これらを理由に敗血症の発症をいう原告らの主張は,採用することができない。
(中略)
以上のとおり,亡Bについては,バイタルサインがSIRS基準を満たしていたとは認められないだけでなく,その他の身体症状等を考慮しても,敗血症を発症していたとは認められない。
本件では、「敗血症を強く疑い,適切な治療を開始すべき注意義務」が問題とされており、前提となる敗血症が否定されたため、過失についても認められなかった。
死亡原因については、「敗血症については,臨床所見から感染が疑われ,かつ,バイタルサインがSIRS基準を満たすかどうかによって判断すべき」とされ、各検査結果等を基準に当てはめて判断されている。