判決書の作成過程を考える
kentaro
弁護士平井健太郎のブログ
東京家裁令和5年3月23日判決 判例タイムズ1529-251
【事案の概要】
原告が、被告は原告とは別の男性の嫡出子であることが明らかになったとして、タイ辞任し無効確認を求めたが、権利の濫用にあたると判断された。
【判旨】
「日本の民法下では、認知は、その性格上、現に父がある子を対象としてはすることができないと解されているから、被告がBの子であるとされる限りは、本件胎児認知を有効なものと認めることはできないというべきである。
「もっとも、日本の民法下で認知は現に父がある子を対象としてはすることができないと解されているのは、親子関係の公的な秩序として父が重複することは許されるべきではないとする趣旨から出たものであると解される。これを本件について見ると、もとより現在までBが被告の父として取り扱われたことがあったことをうかがわせる証拠ないし事情は見当たらないところ・・・Bが被告の父として取り扱われる可能性は、今後とも乏しいというべきであって、本件胎児認知を有効なものとしたとしても、被告の父の重複が顕在化する事態が現実に生ずるとは直ちには想像し難いというべきである。」
「本件事実関係の下においては、本件胎児認知が無効であることの確認を求める原告の請求を許すことには、正義公平の観点から見て看過することのできない疑問が残るといわざるを得ない。そうであれば、本件胎児認知が無効であることの確認を求める原告の請求は、権利の濫用に当たり、許されないものであるというのが相当である。」
【メモ】
本来的には無効とされるところ、本件具体的事情の正義公平の観点から、解決の妥当性も考慮して、無効請求を権利濫用として認めなかったものと考えられる。