予備校教材転売に対する違約金条項が問題になった事案
東京高等裁判所令和4年11月10日判決(判例タイムズNo.1520)
予備校教材を転売等することを禁止する条項に違反した場合に受講料の10倍の料金又は500万円のより高額な方を違約金とする条項の有効性が争われた事案
「違約金」に加えて損害賠償請求を別途行うとしていることからすれば、本件違約金条項は、損害賠償額の予定を定めたものではなく、違約罰を定めたものと解するのが相当である。
消費者契約法9条は消費者契約の解除に伴う損害賠償の予定等について規律するものであるところ、本件違約金条項は、本件受講契約の解除を前提とするものではない
受講生は損害賠償義務を負担し得るところ、本件違約金条項は、これに加えて違約罰を課するものであるから、任意規定の適用による場合に比し、消費者である受講生の義務を加重するものというべきである。
違約金が現実に課される段になれば受講生の受ける負担は現実的なものとなるから、その額が禁止事項違反により生じ得る損害の額に比して高額に過ぎると評価すべき場合には、信義則に反して消費者である受講生の利益を一方的に害するものであって、消費者契約法10条により無効となり得ると解するのが相当である。
消費者契約法10条が民法1条2項の基本原則を踏まえたものであることを考慮すると、本件の個別事情を踏まえつつ、本件に適用する限りにおいて、本件違約金条項を全部又は一部無効とすべきであるから、一部無効とする場合にはどの範囲で無効とすべきであるかを検討するのが相当である。
被控訴人の経営にとって望ましいものでないというレベルを超えた多額の損害まで発生するものとは考えられない(少なくともそのような損害が生じ得ると認めるだけの立証はされていない)。
本件違約金条項については消費者の利益を一方的に害する条項を無効とする消費者契約法10条により定める違約金の額を合理的な範囲に制限すべきであり、本件における事実関係の下では5万円を超える部分は無効とするのが相当である。