備忘録

「弁護士費用・調査費用が損害として認められる範囲」

kentaro

「弁護士費用・調査費用が損害として認められる範囲」(判例タイムスNo.1530-45頁)

この論文では、弁護士費用と調査費用が、裁判手続きにおける損害賠償請求の中で認められるか否かについて整理されている。
私は、医療過誤調査を行う中で、医師に意見書の作成を依頼するなどしており、裁判手続にいてこういった費用が認められるのか関心があり、この論文を参照した。

医療訴訟や建築訴訟などの専門的知見を要する分野では、平成24年判例と同様に、債務不履行構成であっても、弁護士費用を求めるのが下級審裁判例の大勢である。

肯定例はいずれも平成24年判例の延長線上にあるものと理解され、①定型的でない、又は、専門的知見を要するなど弁護士に委任しなければ十分な訴訟活動をすることが困難な事案(事案3,5)、又は、②不法行為の成立し得る事案(事案4,9)であることを指摘したものが多い(事案6は特に指摘がないが、上記①に当たると思われる)。1割基準に沿って算定されている。

弁護士費用について上記のような言及があり、医療訴訟では弁護士費用が損害として認められている。

他方、調査費用については、以下のとおり言及されている。

主張立証に要した調査費用が損害賠償請求において認められるかについて判示した最高裁判例はない。

医療訴訟において、協力医への謝礼が損害の一部に当たるとして請求される例はすくなく、いわゆる実務本の記載も乏しい。ごく少ない記載としては、「協力医に対する謝礼を損害とみるのは相当ではなく、債務不履行ないし不法行為と相当因果関係のある弁護士費用の額を算定するに当たり、訴訟が専門的で複雑困難であることの事情として考慮するのが相当である。(医療の専門家からの助言ないし協力は、弁護士が代理人として有効な訴訟活動を行うための準備の中で行われるものである。)」というものがあった。

本論文では、医療訴訟以外の第三者委員会や探偵費用などの調査費用に関する言及もされている。
調査費用に関しては、「調査費用については、立証のための費用といっただけでは肯定にも否定にも働かない。実質的な基準は、専門的知見の要否であると思われる。」とまとめられている。

実際の事件で調査費用が問題となった場合には、本論文を参照し、引用されている裁判例も参照したうえで、調査費用が損害に含まれることを主張立証しなければならない。

ABOUT ME
平井 健太郎
平井 健太郎
弁護士
大阪市で医療過誤事件(患者側)を中心に扱っています(全国対応)。 現在、訴訟6件(高裁1件、地裁5件)、示談交渉中・調査中の事件は10件以上を担当しています。
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