業務委託契約の報酬と給与に関する差押範囲変更申立事件
大阪地裁令和6年7月5日 判タ1529-192
【事案】
債権者が、継続的な業務委託契約に基づく報酬債権(6ヶ月分)を差し押さえたのに対し、債務者が民事執行法153条1項に基づき差押命令の全部取消しを求め、債務者の報酬が実質的に給与と同視できるとして差押えの範囲が給与債権と同じ程度まで減縮された。
【判旨】
「第三債務者との間の継続的な業務委託契約に基づき、牛乳及び乳製品の宅配業務を行い、毎月その報酬(業務委託料)の支払を受けていると認められる。」
「申立人には他に生計を維持するための収入・財産があるとはうかがわれないことを踏まえると、本件差押命令により差し押さえられた報酬債権は、実質的に、民事執行法152条1項2号の「給与に係る債権」と同視することができる。」
「このうち各種ローンの返済額があることを理由に差押禁止債権の範囲を変更すると、他の債務の返済を優先することを認めることになるから、本件でこれを理由に範囲変更を認めることはできない。」
「現時点における申立人の経済的困難の程度は自助努力で対応すべき範囲内のものというべきである。」
【メモ】
差押範囲変更が問題となる事例には「生活困窮型」「給与同視型」「差押禁止債権原始型」がある。
民事執行法152条1項2号
次に掲げる債権については、その支払期に受けるべき給付の四分の三に相当する部分(その額が標準的な世帯の必要生計費を勘案して政令で定める額を超えるときは、政令で定める額に相当する部分)は、差し押さえてはならない。
一 債務者が国及び地方公共団体以外の者から生計を維持するために支給を受ける継続的給付に係る債権
二 給料、賃金、俸給、退職年金及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る債権
民事執行法153条1項
執行裁判所は、申立てにより、債務者及び債権者の生活の状況その他の事情を考慮して、差押命令の全部若しくは一部を取り消し、又は前条の規定により差し押さえてはならない債権の部分について差押命令を発することができる。